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深谷 有喜; 松田 巌*; 河裾 厚男; 一宮 彪彦*
JAEA-Review 2010-065, JAEA Takasaki Annual Report 2009, P. 150, 2011/01
Si(111)--Ag表面は、典型的な二次元金属として精力的に研究されている。Si(111)--Ag表面上に微量の貴金属原子(Cu, Ag, Au)やアルカリ金属原子(Na, K, Cs)を吸着させると、急激な表面電気伝導度の上昇とともに、超構造が発現する。これまでの研究から、貴金属原子を吸着させた超構造の場合、単位格子内の3個の吸着原子は、下地のSiトライマーを囲むように、大きなAg三角形の中心に位置することがわかった。しかし、アルカリ金属原子を吸着させた場合の超構造の研究はほとんど行われておらず、その原子配置は不明である。本研究では、反射高速陽電子回折を用いて、Cs原子を吸着させた超構造の原子配置を調べた。測定したロッキング曲線には、全反射領域において、Cs原子が吸着したことによるディップ構造が観測された。動力学的回折理論に基づく強度解析から、Cs原子が下地のAg層から3.04Aの高さに吸着していることがわかった。この値は、貴金属原子の場合に比べて約2.5A高い。これは、Cs原子の原子半径が貴金属原子に比べ約2倍大きいことが影響していると考えられる。また、Cs原子の吸着サイトは、貴金属原子の場合とは異なり、Ag原子の直上に位置していると考えられる。
深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦*
JAEA-Review 2010-065, JAEA Takasaki Annual Report 2009, P. 151, 2011/01
K/Si(111)-B表面は、モット絶縁体表面の典型例として精力的に研究されている。最近この表面が、270Kで-構造相転移を起こすことが報告された。これまでに、K/Si(111)-B表面の電子状態に関しては、光電子分光等を用いて詳細に調べられている。しかし、その原子配置は実験的に決定されていない。本研究では、反射高速陽電子回折を用いて、K/Si(111)-B表面における最表面K原子の吸着位置を決定した。測定したロッキング曲線には、全反射領域において、K原子の吸着により発現したディップ構造が観測された。動力学的回折理論に基づく強度計算との比較から、K原子はSi第一層から1.99Aの高さに位置していることがわかった。これまでの第一原理計算の結果と比較すると、この高さはK原子がサイトに吸着した場合に対応している。また、理論計算ではサイトへの吸着が、表面エネルギー的に最も安定であることが示されている。したがって、最表面のK原子の吸着サイトがサイトであることを実験的に初めて決定することができた。
植木 悠二; Dafader, N. C.*; 瀬古 典明; 玉田 正男
JAEA-Review 2010-065, JAEA Takasaki Annual Report 2009, P. 45, 2011/01
放射線を利用した高分子加工技術の一つである放射線グラフト重合法は、既存の高分子基材に新たな機能性官能基を導入することができる優れた手法である。しかし、従来技術では、反応活性種となるラジカルの失活防止対策として、不活性ガス雰囲気下での放射線照射,反応液中の溶存酸素の除去,真空あるいは不活性ガス雰囲気下での重合反応などの煩雑並びに熟練した技術を必要とする。本研究では、このような煩雑な操作を必要としない簡便なグラフト重合体作製方法を確立するために、放射線グラフト重合における各種重合条件のグラフト反応率に対する影響を詳細に検討した。その結果、照射工程においては、大気の遮断が可能な密封型照射容器を使用すれば、脱酸素処理や冷却は不要であることがわかった。また、重合反応工程においては、反応溶液中の溶存酸素濃度が最もグラフト率に影響を及ぼし、照射線量が50kGy以上であり、なおかつ、反応溶液中の溶存酸素濃度が5mg/L以下、好ましくは、2mg/L以下であるならば、重合反応速度がラジカル失活速度を上回るため、大気圧及び空気雰囲気下でも放射線グラフト重合反応が進行することを見いだした。
植木 悠二; Mohamed, N. H.*; 瀬古 典明; 玉田 正男
JAEA-Review 2010-065, JAEA Takasaki Annual Report 2009, P. 41, 2011/01
動植物性油脂を原料として製造されるバイオディーゼル燃料(BDF)は、バイオマス由来、毒性が低い、生分解性を有する、再生可能なエネルギーである等の優れた特長を有しており、軽油代替燃料として注目を集めている。近年、多孔性陰イオン交換樹脂を触媒として利用するBDF製造法が開発されたものの、この製法では反応速度が遅い等の問題があった。本研究では、放射線グラフト重合技術を利用した新規BDF製造用触媒の開発を試みた。その結果、エマルション重合とそれに続く化学修飾(第4級アンモニウム基の導入及びNaOH処理)により、目的とする新規BDF製造用触媒を作製することができた。グラフト重合体の反応速度は、粒子状樹脂と比較して3倍以上となり、短時間で効率的にBDFを製造可能であった。反応温度50C,反応時間2時間におけるトリグリセリド(油脂)の反応率はグラフト重合体では82%、粒子状樹脂では26%となった。
溝手 範人*; 片貝 秋雄*; 玉田 正男
JAEA-Review 2010-065, JAEA Takasaki Annual Report 2009, P. 47, 2011/01
ゴム製品は、ゴム表面の摩擦低減・耐摩耗性の向上を目的とした塩素化処理やコーティングが行われている。しかし、これらの表面処理は、塩素による環境負荷の問題があり、より環境に優しい表面改質技術が求められている。本研究では、電子線同時照射共グラフト法における親水性・疎水性モノマーの組成比が撥水性などのゴム表面特性へ及ぼす影響について検討を行った。その結果、疎水性モノマーのみをグラフト重合により付与するよりも、親水性モノマーを10%程度添加した系の方が、親水性モノマーのグラフト層に疎水性モノマーが選択的に取り込まれやすくなり、ゴム表面から10m程度の領域に疎水性モノマーが偏在することがわかった。
神谷 佳希*; Shin, S.*; Sabarudin, A.*; 梅村 知也*; 植木 悠二; 玉田 正男
JAEA-Review 2010-065, JAEA Takasaki Annual Report 2009, P. 42, 2011/01
三次元的に気孔が連通した"モノリス"と呼ばれる多孔担体は、従来の粒子充填構造の担体と比較して、流体透過性が高く、また、物質移動が対流により促進される。そのため、通常の数倍から数十倍の速度で送液でき、かつそのような高速送液下でも分離や濃縮、酵素反応等の化学操作を効率よく行えることから、吸着分離剤や触媒担体として注目を集めている。本研究では、親水性相互作用(HILICモード)に基づく新規両性イオン型モノリスカラムの作製を試みた。スルホベタイン型官能基を有する機能性モノマーを主成分とする反応溶液を細管内に封入し、10kGy/hの線を1時間照射することにより、目的とするモノリスカラムを作製することができた。本カラムを用いてカテコールアミンの分離を試みた結果、アセトニトリル/酢酸緩衝溶液(85:15, v/v)のアイソクラチックな移動相条件にもかかわらず、10種類のカテコールアミンとその代謝物を30分以内で良好に分離することができた。
Parajuli, D.; 広田 耕一; 瀬古 典明
no journal, ,
バイオマスを利用した都市鉱山などからの有用金属分離回収を開発するため、木材から抽出分離したリグニンに電子線を照射してエチレンジアミンを修飾した吸着剤と化学的手法で修飾した吸着剤との貴金属に対する吸着挙動を比較評価した。その結果、電子線照射により合成した吸着剤は、0.5M塩酸溶液において、Au(III), Pt(IV), Pd(II)に対してそれぞれ3.1, 2.3, 0.85mol/kgの最大吸着量を示し、この値は、化学的に合成した吸着剤に比べ、それぞれ0.7, 0.4, 0.4mol/kg大きいことから、バイオマス基材への官能基の修飾に電子線が有効であることが明らかになった。
牧野 高紘; 平尾 敏雄; 小野田 忍; 大島 武; 廣瀬 和之*
no journal, ,
これまで、われわれは、半導体デバイスのソフトエラーの一因となる、デジタルシングルイベントパルス(Digital Single Event Transientパルス: DSETパルス)の時間幅測定を行ってきた。DSETパルスはごく短時間の電圧変動であるため、通常の測定機器による時間幅の測定は困難である。そのため、これまではLSIの内部に時間幅測定用のデジタル回路を組み込み、それによってパルス幅を測定する方法が取られてきた。しかし、この手法は、特殊な回路の設計・製作が必要となり、測定にかかるコストや時間がかかってしまう。この問題を解決するため、LSI内部の論理素子を構成する最小単位である1個のMetal-Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor(MOSFET)での放射線誘起過渡電流に注目し、その電流波形と論理素子の構造からDSETパルス波形を解析的に推定する手法を提案し、実証を行った結果について報告する。
志風 義明; 谷村 嘉彦; 三枝 純; 堤 正博; 内田 芳昭*; 吉澤 道夫; 原野 英樹*; 松本 哲郎*; 水橋 清
no journal, ,
20MeV以上の中性子に対する中性子校正場は、国内で未整備である。そこで、原子力機構・高崎量子応用研究所TIARAの数十MeV領域の高エネルギー準単色中性子照射場を利用して、校正場の開発を行った。この校正場の中性子フルエンスを直接モニタするために、透過型フルエンスモニタを開発した。整備予定の3エネルギー点でモニタの特性評価を行い、透過型モニタの計数率と照射中性子強度との相関が良好であることを確認できた。また、各測定ごとのモニタ計数値、及び、ビームタイム中のビーム強度の変動を表示・記録できる計測システムを整備し、運用を開始した。また、絶対測定データをもとに基準検出器の値付けを行い、実験ごとにフルエンスモニタに値を移す手順を取り決めた。これらにより中性子フルエンスのモニタ技術を確立し、高エネルギー中性子校正場を確立した。
小野田 忍; 牧野 高紘; 大島 武
no journal, ,
半導体の直上に設置した発光体を用いてイオン入射位置を検出すると同時に、半導体で発生した電荷を検出することで、単一イオンが半導体に誘起する電荷のマッピングを行うことのできる、IPEM(Ion Photon Emission Microscopy)の開発を進めた。本実験の結果、単一の150MeV-Arイオンが誘起した発光を検出できることがわかった。Am-241線源からの5.5MeV-Heイオンでも同様に、単一イオンが誘起する発光スポットを検出できることを確認した。一方、発光体を通過したイオンがダイオードにおいて誘起する過渡信号をプリアンプリファイア(ORTEC 142C)及びスペクトロスコピックアンプリファイア(ORTEC 571)にて増幅し、オシロスコープ(Hewlett Packard 54520A)を用いて検出した。さまざまな波高の信号が検出された。これは、発光体の密度が不均一であることから、発光体を通過したイオンのエネルギーが単一でないことに由来すると考えられる。オシロスコープにて検出された電気信号と発光スポットの重心を関連付けることで、単一イオンが半導体に誘起する電荷のマッピングが可能であることを明らかとした。
小野田 忍; 大島 武; 田中 保宣*; 高塚 章夫*; 八尾 勉*
no journal, ,
炭化ケイ素静電誘導トランジスタ(SiC SIT)、Si電界効果トランジスタ(Si MOSFET)、及びSi絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(Si IGBT)に10MGyまで線を照射し、半導体素子の性能を表す指標であるオン電圧と降伏電圧の変化を調べた。その結果、SiC-SITやSi MOSFETでは、オン電圧の変化が微少であるのに対して、Si IGBTでは、数百kGy程度でもオン電圧が急激に増加することがわかった。一方、SiC-SITやSi IGBTでは、降伏電圧の変化が微少であるのに対して、Si MOSFETでは、吸収線量の増加とともに降伏電圧が低下してしまうことがわかった。オン電圧や降伏電圧が劣化する現象は、放射線環境下で使用する半導体にとって、致命的な欠点である。Si MOSFETやIGBTでは、このような致命的な電気特性の劣化が観察されたが、SiC-SITでは、10MGyという大線量の線照射後も初期特性からの大きな変動はなく安定した電気特性が得られた。以上のことから、SiC半導体の優れた耐放射線性を実証することができた。
佐々木 直樹*; 垣見 征孝*; 平尾 敏雄; 大島 武; 小野田 忍
no journal, ,
数年後の打上げを目標にしている小型衛星の開発には、民生用電子部品の放射線照射試験評価が必要不可欠である。本研究では、FeRAM(強誘電体メモリ)及びMPU(マイクロプロセッサ)にサイクロトロンからの高エネルギー重イオンを照射し、そのシングルイベント耐性を調べた。その結果、FeRAMにおいては、シングルイベントラッチアップに対する耐性が高いこと、シングルイベントアップセットが起こらないこと等が明らかになった。FeRAMのシングルイベント発生頻度は3,000year/event以上であり、放射線への耐性は高いという結果を得ることができた。一方、MPUについては、シングルイベント発生頻度の評価まで行えなかったものの、シングルイベントラッチアップ及びシングルイベントアップセットの双方が検出され、今後も引き続き照射試験を行う必要があることが確認された。
田中 伸幸; 小貫 薫; 八巻 徹也; 越川 博; 浅野 雅春; 前川 康成
no journal, ,
熱化学水素製造法ISプロセスに対する電解電気透析法(EED)の適用性評価の一環として、原子力機構が開発した放射線グラフト法を用いて作製したヨウ化水素濃縮用高分子電解質膜の高温における耐久性を検討した。通算100150時間のEED試験(ヨウ化水素酸、100C)を行い、セル電圧及びイオン交換容量の変化挙動を調べた結果、製膜に際して架橋材を用いた補強処理を行うことが耐久性の向上に有効であることがわかった。
笠井 昇; 保科 宏行; 瀬古 典明; 柴田 卓弥*; 高橋 牧克*
no journal, ,
本研究は、有害物質が含まれる廃坑廃水や産業排水によって生じる水質汚染の一因となっているヒ素などの水中溶存アニオン系有害物質を水質基準値以下まで浄化可能な吸着材を植物由来の生分解性素材を用いて創製し、実用化を目指すものである。本報告では、パイロット規模における吸着材の合成条件を確立するために製作したグラフト重合装置の特性試験結果及び実験室規模のビーカースケールで最適化したグラフト吸着材の合成条件を適用して大量合成を行った結果について報告する。幅30cm,長さ7mのセルロース基材を巻物状にしてグラフト重合し、得られた吸着材の吸着特性を調べた結果、インジウム,ビスマス,ウランの吸着率はビーカースケールで作製した吸着材の性能と同等であり、巻物の長さ方向に対して、吸着率の分布は10%程度であり、均一な吸着材が得られた。
米田 安宏; 西畑 保雄; 阿部 浩之; 内田 裕久*; 松村 義人*; 竹内 光明*; 田中丸 天兵*; 篠原 義明*
no journal, ,
強誘電体,超磁歪材料,形状記憶合金,水素吸蔵材料などのスマートマテリアルと呼ばれる物質群は、結晶内に生じている弾性歪みによって物性をコントロールすることができる。イオンビームや電子線による照射は結晶内の弾性歪みを効率的に変化させることができるため、スマートマテリアルの特性改変に有効な手段である。本研究グループでは、照射材料の新たな結晶構造の可視化技術として2体相関分布関数法(pair-distribution function; PDF)を適用した。PDF解析によって水素吸蔵材料や超磁歪材料の照射効果が抽出可能かを検討した。
佐伯 誠一; 長澤 尚胤; 廣木 章博; 森下 憲雄; 玉田 正男; 工藤 久明*; 勝村 庸介*
no journal, ,
従来多糖類は放射線照射により低分子量化を伴う分解反応を起こすが、カルボキシメチル化した多糖類を高濃度水溶液条件下において放射線照射を行うと、架橋反応が優位に起き、ゲル化する。特にカルボキシメチルキトサンの場合、キトサンが本来有する抗菌性や金属吸着能を備えた機能性ハイドロゲルとなる。本研究では、放射線架橋の一因となるOHラジカルとの反応により生成するカルボキシメチルキトサンラジカルについて、フローシステムを用いたESR測定により検討を行った。測定により得られたESRスペクトルは、超微細結合定数や重ね合わせシミュレーションによる検討から、TripletDoubletとDoubletの重ね合わせと解釈され、それぞれ6位炭素に連なるカルボキシメチル基炭素上ラジカル、及び3位炭素に連なるカルボキシメチル基炭素上ラジカルと同定された。
島田 明彦; 出崎 亮; 大島 武; 田村 清俊; 瀬口 忠男*; 工藤 久明*
no journal, ,
原子力発電所で用いられるケーブルの絶縁材には、劣化を抑制するための酸化防止剤(酸防)が加えられている。本研究では、絶縁材としてよく使用される架橋ポリエチレンに酸防を0, 0.1, 1%添加したものをシート状に成型した試料を作製し、これを熱,放射線劣化させることにより、ポリエチレンの熱,放射線劣化に対する酸防の効果を調べた。135Cの熱劣化では、酸防が0.1%という低い濃度でも劣化が抑制されたが、それ以上の濃度では劣化の抑制効果は変わらなかった。一方、1kGy/hの線照射では、酸防濃度が0.1%では抑制効果がほとんど見られないが、酸防濃度1%では劣化が抑制された。酸防は、放射線劣化に比べ、熱劣化に対してより効果的に作用することがわかった。
今泉 充*; 小林 裕希*; 島崎 一紀*; 高橋 眞人*; 佐藤 真一郎; 大島 武; 高本 達也*
no journal, ,
人工衛星の太陽電池パドルには軽量化及び低体積化が要求されるが、それには高効率を維持したまま太陽電池を薄膜化する必要がある。そこで今回は、InGaP/GaAs2接合薄膜太陽電池を開発し、その耐放射線性について現行の3接合太陽電池との比較,検討を行った。2接合薄膜太陽電池に対して種々のエネルギーの陽子線をcm照射し、照射前後での電流-電圧特性及び分光感度特性を測定した。それら劣化量を3接合太陽電池の結果と比較したところ、薄膜2接合太陽電池のGaAsサブセルは3接合太陽電池のそれより劣化が小さいことがわかり、薄膜2接合太陽電池の高い耐放射線性が実証された。また、今回開発した薄膜2接合太陽電池をフレキシブル軽量セルアレイシート、さらに新構造軽量パネルに適用した結果、出力/質量比100W/kgという世界最高水準の軽量化が達成された。
佐藤 真一郎; 大島 武; 今泉 充*
no journal, ,
水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)薄膜半導体はフレキシブルな宇宙用太陽電池の材料としての応用が期待されているが、その放射線照射効果についてはよくわかっていない。今回、イオン照射による水素の挙動を観察するために、a-Si:H薄膜試料に330keV Siイオンを523Kで/cm照射し、温度を維持したまま前後に半跳粒子検出(ERD)法を用いて水素濃度の深さ分布を測定した。その結果、照射前後での水素濃度分布の変化は観察されなかった。これにより、本研究で用いた試料であるデバイスグレードの高品質なa-Si:H薄膜では拡散や放出が比較的起こりやすいクラスター化した水素の存在量が少なく、半導体特性とクラスター化した水素量の少なさには関連性があるということが示唆された。
岡田 浩*; 秦 貴幸*; 近藤 正樹*; 古川 雄三*; 若原 昭浩*; 大島 武; 佐藤 真一郎
no journal, ,
われわれはこれまでに窒化物半導体ヘテロ構造であるAlGaN/GaN高電子移動度トランジスタ(HEMT)構造に対してイオン注入法でEuを添加した三端子型発光デバイスを提案・試作し、その発光を報告してきた。電流注入発光(EL)素子として良好な特性を実現するためには、デバイス作製条件と電気的特性・発光特性との関連をふまえた最適化が必要であることから、イオン注入の注入量,エネルギーと、デバイスの電気的特性、発光特性との関連について検討を行った。その結果、作製したトランジスタ構造のチャネルコンダクタンスは、Eu注入量の増加とともに減少する傾向がみられ、これは主としてキャリア移動度の低下によるものであることがわかった。また、デバイスの電流注入発光を分光器を用いてスペクトル分析したところ、Euイオンの内殻遷移DFに対応する620nm付近にピークを持っており、注入されたEu原子からの発光が得られていることが確認できた。